2021-03-20

柴崎さんインタビュー ~ オーガニックな暮らし ~

【柴崎広美さん】
寄居町出身。
オーガニックカウンシル代表。

ー 柴崎さんがオーガニックに関心を持ったのはいつからですか?

それでやっぱり自分の子どもに食べさせるものは気をつけなきゃなと思いました。
父親が添加物を気にするタイプだったんです。
とは言ってもガチガチに縛られるほど厳しくはなかったですし、その当時は「ふーん」という程度であまり気にしていませんでした。
でもやっぱり子供が産まれてから考えるようになりましたね。
ちょうどアトピーとかが流行り出した頃で。
周りにもアトピーのお子さんを育てている仲間がいたし、親自身も花粉症で大変な姿も見ていました。
そういったアレルギーの原因は何なんだろうなって思っていた時、食べ物も原因のひとつということを聞いて。
それでやっぱり自分の子どもに食べさせるものは気をつけなきゃなと思いました。

 

ー 確かにアトピーや花粉症などのアレルギーは年々増加していると聞きます

昔にもあったと思うんですけど、もっと少なかったような気がします。
それと私は結婚してから高知県に移り住んだのですが、嫁いだ先の家の前に生姜畑がありました。
農薬を使っていて、散布する時に農家さんから声をかけられると義理の母に言われるがまま一緒にまだ乾かない洗濯物を取り込み、家中の窓を閉め切りました。
周りにも果物農家さんが多くて、農薬の良くない面を直接聞いたりもしていたので、自然と食べ物や環境に関心が強くなっていたと思います。
あともうひとつ、カフェをしたいという想いがあって。
子供の手がちょっと離れた頃に、ケールっていう葉野菜があるんですけど、それをりんごなどとミックスした生ジュースを中心に販売するチャレンジショップを2年間ほどしていました。
それも関心を持つきっかけのひとつですね。

 

ー 生ジュースは今でこそメジャーですが、当時としては珍しいですよね?

15年くらい前だと思うのですが、珍しかったかもしれません。
今は多くなりましたが、私が始めてから1、2年後に生ジュースのスタンドみたいなものが流行り出した印象です。
でもその時は、そこまでオーガニックにこだわりがあったわけではないんです。
買った缶ジュースよりは絶対生ジュースの方がいいとは思っていましたけど、材料全てが無農薬というわけではなかったですし。
ただケールに関しては義理の母が畑で育てた無農薬のものをもらっていたので、無農薬ではない他の材料については気になっていましたね。

 

ー 実際にお店を出すことができる行動力がすごいですね

高知市も空き店舗が増えていて、270メートルの商店街がシャッター商店街のようになりそうな時期でした。
そんな状況のなかで、県と市と商工会が共同して空き店舗対策をしていて、まちづくり事業の一般委員を募集していたんです。
そこに応募したら採用になって。
そこで商店街の会長さんなどと一緒にまちづくりをしつつ、自分でもカフェをしていましたね。

 

ー まちづくりにまで関わっていらしたなんて、かなり精力的に活動されていたんですね。

そうですね、この時は(笑)
でも高知は昔から共働きの文化があって、女の人も働く人が多いんです。
知る人ぞ知る「はちきん」です。
なのでモーニングやお茶の文化が普及したようです。
人口比率で日本一喫茶店やカフェが多いみたいですよ。

 

 

ー 今は寄居に住われていますが、戻られた時どんな風に感じましたか?

「もうずっとここで生きていくんだろうな」と思いつつ、もう三十何年も戻ってきていなかったので、何も分からなくて。
本当に浦島太郎のような感じでした(笑)
分からないことだらけで戸惑っていましたね。

 

ー 寄居ではどのように活動をはじめられたのでしょうか?

分からないことだらけだったので少し周りのことも知りたいなと思っていたんですけど、ちょうどそのころ寄居町で有機無農薬で栽培したエキナセア(※1)を活用したまちづくりをしていることを知りました。
農薬の怖さも感じていましたし、高知にいた時にはハーブにも興味があったので少し勉強したりハーブの料理教室にも通っていたんです。
「これだ」と思って、ハーブコーディネーターの資格も取り、ハーブに携わる仕事をするために当時エキナセアを使った加工品を製造・販売していたアグリン館(農産物加工施設)に勤めました。

 

ー 今もハーブを育てていらっしゃるんですか?

今も自分の畑で育てています。いつか自分で育てたハーブが商品化できたら嬉しいですね。

 

ー 他にもオーガニックについての取り組みをされていると聞きました

つむぐ畑」という活動をしています。
帰ってきてから野菜づくりを勉強したいと思って皆農塾(※2)の家庭菜園講座に参加していたのですが、そこで使っていた畑が大型ソーラーパネルを設置する関係で一部が使えなくなってしまったんです。
ただその横に土地を売却しなかった地主さんがいらっしゃったんですね。
雑木林だったんですが、約一反ほどあるその場所を貸していただけることになって。
すぐ横で自然が失われつつ景色が変わっていくのを見届けながら、自分達で一から、それこそ開墾するところから畑を作ってみようということになって。

 

ー 開墾からですか?

そうなんです、すごいですよね。
草刈りをして、木を切って、ユンボなど重機も使ったりして。
10人くらいでやっているのですが、かなり重労働です。
木の根っことか、ごぼうのお化けみたいなのが出てきたりしました(笑)

 

ー 本当に一からとは驚きました。それでは、オーガニックカウンシルはどんな経緯で結成されたのでしょうか。

そういった畑づくりやハーブに携わる活動をしながらも、やっぱり町のことはあまり分からないままだったんですね。
町についてもっと知りたいという思いもありましたし、お店ももう一度したいなという気持ちもあって、参考に寄居100人カイギ(※3)に参加したんです。
権田さんとはそこでお会いしたんですが、そこで「無農薬や有機の野菜っていいよね」という話になって。
寄居にも有機無農薬の野菜はあるけど、もっと広めたいよね、という話で意気投合したんです。
井伊さんとは以前、町が企画した「生産者めぐり寄居町のおいしい生産者を巡る旅」というツアーがあって、その時に出会いました。
そこから何回かお二人とお会いする機会があって、一緒にオーガニックを広める仲間づくりのようなことをしようということでオーガニックカウンシルが始まりました。

 

ー オーガニックカウンシルではどんなメッセージを伝えたいですか?

なるべくナチュラルな生活や暮らしをしていこう、という感じですね。
「なるべく」というのは、どうしてもスーパーで有機無農薬ではない野菜を買う必要があったりもしますし、最初から全てを変えるのは難しいと思うからです。
まずは日々の生活の中で、デトックスのようにたまにハーブティーを飲んだり、ちょっと有機無農薬にこだわったご飯を食べるなど、そういった小さなことから始めていただければと思います。

 

ー 確かに「オーガニック=敷居が高い」ようなイメージがあります

そうですね、そうやって無理なくオーガニックを取り入れるライフスタイルを広めていけたら良いなと思っています。
まだ始まったばかりなので、まずは足元からじゃないですけど、自分が住んでいるところの自然と共生し、大切にして生きていくライフスタイルを提案したり、オーガニックに関する仕事をされている方を紹介したりしていきたいです。
それから、地元や身近にある良さを発信して、共感してもらえると嬉しいですね。
あと、特に若い人だと野菜を選ぶ時の良し悪しも分からない人がいるんじゃないかと思うんです。
私自身も自分で育てるのはありふれている野菜が多いので、自分の知らない野菜を見つけるとどう調理して良いか分からないんですよね。
なので、そういった野菜の選び方や調理法なども伝えていきたいです。

 

ー 最後に今後の展望を教えていただけますか?

オーガニックカウンシルのファンがつくれるように、いろいろな情報発信をしていきたいですね。

 

ー ありがとうございました。

ありがとうございまいた。

 

 

<編集後記>

高知県での活動や寄居町に戻ってからの農体験等、様々な経験をされてオーガニックに行き着いた柴崎さん。
しかし柴崎さんの姿勢はあくまで自然です。
より広くオーガニックな暮らし方を広めていくために、信念とこだわりは持ちつつ、固執はしすぎない。
この穏やかでゆるやかな考え方も、とてもオーガニックらしいなと思いました。

 

(※1) エキナセア
キク科の植物。「世界三大ハーブ」「世界三大免疫植物」の1つに数えられ、アメリカやヨーロッパでは広く流通しているハーブ。寄居町では100%無農薬で栽培したものを特産品としていた。
(※2) 皆農塾
1980年に集まった有志により立ち上げられた非農家出身者のための農業塾。
農場は創立以来、無農薬・無化学肥料にこだわり持続可能な農業を目指している。
(※3) 寄居100人カイギ
東京都港区で始まった「毎月1回開催、地域にゆかりのある方を毎回5人ゲストとして招き、全20回開催し、ゲストが100人になったら解散する」ことのみをルールにしたコミュニティイベント。寄居町では、埼玉県で初めて、平成31年1月から始まった。

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