白井さんインタビュー ~ オーガニックに暮らす ~
【白井操子さん】
小川町生まれ。森林インストラクター。
神奈川県で教員をしたのち、寄居町に移住。
現在はつむぐ畑に参加中。
ー 白井さんは寄居町出身ではないのですよね
小川町生まれですね。
商家でしたが、ちょっと歩くと畑がありました。
ここ富田には親戚がいて、20代くらいの時に法事で来たことがあって。
その時は春だったのですが、自然がすごく素敵で、いつか絶対こういうところに住みたいと思っていました。
ー 都内にも住んでいらっしゃったこともあるんですよね
新宿と飯田橋に住んでいました。
ただ仕事が忙しかったので住むと言っても寝るだけでしたね。
通勤などでは便利でしたが、仕事を辞めたらその便利さは必要ではなくなっていました。
ー 都内からこちらに戻ってくる時に、ここに住むことを決めたのはなぜですか
昔に見ていた低い山の雑木林が印象に残っていて、北側に山があってその前に家を建てたいと思って探していたんです。
それで八高線や東上線、越生線沿線などずっと探していたのですが、条件に合うところがなかなか見つからなくて……最終的に見つかったのがここでした。
裏に林もあるのですが、長い間放置されていた暗い森でした。
購入する前に一人で中に入って、雑木や落葉樹があることが確認できたので「ここでいいか」と。
ー 白井さんはもともと教師をされていたんですよね
高校の生物教師をしていました。
でも子育てや仕事に追われる年月を過ごしたので、53歳で退職したんです、隠居生活がしたくて。
退職後は少し暇ができたので何かボランティアをしようと思い、千代田区の環境活動に入ったり、森林インストラクターの資格を取ったりしました。
ー 森林インストラクターというのはどういう資格なのでしょうか
森の案内人とも言われていて……間伐したり整備することで森を管理したりします。
森を健康にするような感じですね。
あとは森や公園などの自然観察のガイドですね。
私は千代田区に住んでいたので皇居東御苑や、奥多摩でガイドをしていました。
ー ガイドをするとなると、森林についての知識が相当必要ですよね。資格の難易度も高いのではないですか
難しいとは言われていますね。
一次試験は森林、林業、野外活動、安全及び教育の4科目の筆記試験、二次試験は実技と面接です。
私は生物教師だったので森林や教育については多少理解があったのですが、林業は生まれて初めての分野だったので、それを勉強するのは面白かったですね。
ー 森林インストラクターとして都内で活動されていたとのことですが、今でも活動は続けていらっしゃるんですか
今は活動場所が遠くなってしまったのと、コロナの影響であまり行けていないんです。
ー 寄居町では活動されていないのですか
今はしていないですね。
ちゃんとした取り組みを何年かすればいいのでしょうが、すぐには参加者はいないでしょうね。
まずそういう取り組みがあることを皆さん知らないですし、行ったら楽しいという経験もないですからね。
ー 確かに私も白井さんとお会いしなければ知らないままだったかもしれません
私が活動していたところだと学校林というのがあって、主に学校の生徒たちや親子向けのイベントをしていたのですが、都内の人が多かったですね。
ー 田舎の人こそ自然が近い分、気付かないことが多いのかもしれませんね
ここに越してきてそう思いましたね。
若いお父さんやお母さん、子供達が知らないというのは分かるのですが、おじいさんおばあさんは昔の素敵な山や林を知っているのに、悲しくないのかなと思いました。
ー 今はオーガニック的な活動などはされているのですか
今は「つむぐ畑」だけですね。
つむぐ畑は、メガソーラーの計画で無くなってしまう畑の隣に林があって、そこを開墾して新しく畑をつくるという活動なのですが、その「林を開墾する」というところに惹かれて。
あとは農薬をシャワーみたいに撒いているところを見たことや、有機農業をしている人が知り合いにできて、その大変さを感じることができたこともきっかけです。
有機農業をしている人って、生活のためだけではできないと思っていて。
そういう人たちは、収入を得るだけではなくて、命の痛みが分かる人たちだと思うんです。
だから少しでも何かできれば良いなと思って参加しています。
ー みなさん畑をされたかったり、野菜をつくりたくて参加されているのかと思いきや違うんですね
全然違いますね、まず誘い方が違いますからね(笑)
ー つむぐ畑は問題提起の場でもあるのですね
そうですね、あとは有機農業やオーガニックな生活というのをここから発信していきたいという想いがあります。
ー 実際に林から開墾されてみていかがでしたか
私は木を見ればその木の名前や特徴が分かりますが、メンバー全員がまだ関心があるわけではないので、そういった野菜以外のところについても少しずつ話ができればと思います。
それと私は森林インストラクターとしてクラフトのイベントなどもしてきたので、将来つむぐ畑でイベントをする際に活かせたらなと考えています。
ー つむぐ畑の活動は奥が深いですね
奥は深いのですが、人数は少ないですし、ほとんど女性なので作業的にはきついですね……現地には水道もないですし(笑)
前に燻炭という、籾殻を不完全燃焼させて肥料にしたことがあったのですが、籾殻を燃やしたものの火を消す水が近くにないので、バケツで水を延々に運び続けるなんてこともありました。
ー それは相当大変でしたね……
そこまで力を入れられている活動ですから、たくさんの人に伝わって欲しいですね
私としては、あの場所で火を燃やせることはとても良いことだと思っていて。
若い人だと火を燃やしたことのない人もいると思うので、そういった火起こしのような体験ができると素晴らしいのではないかと思います。
つむぐ畑は野菜だけではなくて、いろいろなことができる場所であるといいですよね。
ー ずっと森林を見てきた白井さんから見て、昔と今では林の在り方も変わっていますか
そうですね、昔は林をちゃんと使っていましたからね。
もともとコナラなどの落葉樹は人が利用するために植えたものなので、利用しなくなって放置されるとだんだん常緑の森になっていきます。
雑木林はしっかり手入れされていれば、春は草花が咲くし、新緑は素晴らしいし、秋の紅葉も綺麗ですし、そういう魅力がありますよね。
ー 白井さんはこの先、森や林を守っていくにはどうすればいいと思われますか
まず間伐するなど、しっかりと整備や利用をしないといけないですね。
あとは実際に森に入っていくこと、触れる機会も増やしていくべきです。
歩くことや案内イベントなどで、関心を持ってもらうことが大切ですね。
森林の気持ち良さを感じてもらうとか、そういう取り組みができればいいと思います。
ー 今日お話を聞かせていただいただけでも、森や林に関心が出てきました
一年中楽しむ方法はあるんですよ。
森で拾ったどんぐりで染め物をするとか。
子供たちって、薪を使ってお餅を焼くだけでもすごく喜びますしね。
ー そういった体験が気軽にできる様になるといいですよね
都内だと結構ありますが、こちらではないんですよね。
できる環境はあるのですが、人を集めるのが大変だと思います。
でも寄居町の人はこういう体験を知らないから、経験してもらいたいですね。
ー すぐ近くに自然があるのでわざわざする必要がないと思うのかもしれませんが、意外と自然に「触れ合う」機会は少ないですよね
可能性は凄くあるので、寄居町の人も気付いてくれるといいなと思っています。
そういう意味でオーガニックカウンシルは良い試みですよね、ネットワークも凄いですから。
私自身はあまり人と繋がりがないので、そういった人と繋がれるだけでも楽しくなるんじゃないかなと期待しています。
ー 白井さんはこれからどんなことしていきたい思っていらっしゃいますか
林の手入れが大変なので、ここ専業で(笑)
ー もっと色々されてもいいのではないですか?(笑)
そうですね。
でもまずは関心を持ってもらって、森がどういう状況なのかを知ってもらえるといいのかなと思っています。
ー 白井さんの想いが伝わって、街全体が変わっていくといいですね
<<編集後記>>
白井さんのお住まいの裏手には、立派な林があります。
綺麗に手入れされていて、歩いているだけでわくわくするような林ですが、白井さんが引っ越してきた時には鬱蒼とした藪状態だったとか。
人の手によって適切な管理をすることの大切さを学ばせていただきました。
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