2021-03-31

山田さんインタビュー ~ オーガニックな暮らし ~

【山田美紀子さん】
リマクッキングスクール師範科卒業後、約10年間、OLと並行してマクロビオティック料理教室の開催、イベント出店、過食と向き合い半断食修行を継続。
2018年に寄居町にて植物性料理専門店どすこい喫茶やまこをオープン。

ー 山田さんはもともと寄居町出身ではないとのことですが、ここにお店を構えるまでの経緯をお聞かせいただけますか

もともとは福島県出身なのですが、学生の時に上京し、大宮の損害保険会社で10年ほど働いていました。
大手企業で働いてみたかったのと、普通のOLみたいなことを私はできるのかなって思って(笑)
会社も、結婚や出産で仕事を辞めるのが嫌だったので、産休・育休制度のあるところを選びました。

 

ー 今とは全然違う業種のお仕事をされていたのですね

母の影響が強かったですね。
母も父も大手企業で働いていて「安定しているし、その方が人生設計も狂わないからいいよ」と言われていたので。

 

ー そんな安定志向だった山田さんが、会社を辞められたのはどうしてでしょうか

そうですね、言ってしまえばその仕事が合わなかったんですよね。
きっちりした仕事内容なので一円単位でもお金を間違ってはいけないのですが、そこにあまり価値観を見出せなかったというか。
途中で大宮から熊谷に異動になり、上司もやりやすい人で環境的には恵まれていたのですが、やっぱりこの仕事はやりたいことではないとは思っていて。

ただ、熊谷に異動してきてから職場以外の友達が増えたんですよね。
同じ時間仕事しているのに、大宮にいる時にはなかった出会いがたくさんあって。
夫ともその友達つながりで出会って、会社員時代に結婚しました。

 

ー お仕事が自分の性格に合わないことに気づかれたことがきっかけになったのですね

とは言え、私としては自分がコントロールできる範囲で暮らしたいという気持ちがありました。
それは、ちゃんとお給料をもらって、産休や育休も取りながら暮らすということだったので会社は辞めたくなかったんです。
ただ私が嫌々仕事に行っているのを見た夫に「会社辞めなかったら離婚するよ」と言われてしまって(笑)

 

ー それは強烈な言葉ですね

凄いですよね(笑)
私も「二人で働いていれば生活が安定するのに、何を言っているの?」と思いました。
私がちょっと我慢すればいいことだと言ったのですが、それに「それでは誰も喜ばない」「もっと方法があるはずだよ」と返されて、その時、確かにな、と思って。

そんな時、渡りに船ではないですけど、よくランチに行っていたオーガニックを取り扱うお店の方から、ここ(店舗)に家を持っているという話を聞いて。
最初は他に借りる人がいるという話だったのですが、その後、借りる人が誰もいなくなったということで「なら私が借りようかな」と思い立ち、上司に「辞めます」と伝えました(笑)

 

ー ご主人の言葉も大きなきっかけですが、お店を借りるまでの経緯にも縁を感じますね。

もともとこういったカフェをしたいとは思っていたのですか

初めからそういった思いがあったわけではなかったです。
ただ、昔から食べることにしか興味がなくて。お店で出された料理が美味しくないと、泣いてしまうくらい悔しがったりするんです(笑)

 

ー 泣いてしまうほどとは……きっと食に対するこだわりがもともとあったということですね

そうかもしれないですね。
でも頭で考えていたわけではないんです。
オーガニックだからとか、農薬が少ないから食べるということではなく、「美味しいから食べたい」という気持ちが先にあって、それがたまたまオーガニックだったという方が多いかもしれないですね。

 

ー 出店されるにあたって不安はありましたか

料理教室などには通って準備はしていたのですが、調理の学校出身でもないですし、ずっとOLでしたから、中途半端すぎて不安でしたね。
店に来るたびにお腹が痛くなってしまって(笑)
満足なものを出せる自信がないというか……体に良いものは出せるかもしれないけれど、美味しいと思ってもらえるものが出せるのかなと。
でもそこが融合されないとお店を出している意味もないので。
「体に良い」ということだけの自己満足のようなお店にはしたくなかったですし、お客様に幸せを感じてほしい、美味しいと思ってほしいとは思っていたのですが、当初は教科書に載っているものしか頭の中にはなくて。

 

ー お店を始められてからしばらくはそんなお気持ちが続いていたのですか

そうですね。だから知り合いが来ると困ってしまって……。
あと、最初ランチも出していなかったんです。
お菓子なら甘みが美味しいと思わせてくれるので大丈夫だと思って、お菓子と飲み物だけを提供していたのですが、この地域は周りに飲食店が少ないんですよね。
それでお客様から「なんでもいいから出してよ」とリクエストされるようになったんです。
でもご飯を炊く道具もないですし、何を出せば良いのか分からなくて。
なので最初の頃は、材料にこだわった体に良いインスタントラーメンとか出していましたね(笑)

 

ー だんだんとランチをせざるを得ない状況になってきてしまったんですね

そもそも出すつもりもなかったのですが、いつの間にかランチのご要望の方が多くなってきて「これはランチを出さないという選択肢はない」と思ってしまって。
そこでパンケーキやガレットを提供する方向にいけば良かったかもしれないのですが、私は「酵素玄米ごはん」という難しい方向に向かってしまって(笑)
でもごはんが決まったことで、あとはそれに合うような食事を出していくというスタイルが決まりました。

 

ー 最初のうちは試行錯誤で大変だったのですね

大変でしたね……微妙なお客様の表情を見ることもあって(笑)
最初は1年続けてみようと思って、退職後のリハビリみたいな感じでしたね。

 

ー それが今ではすっかり地域に馴染んだお店となっていますが、もう開業されて何年くらい経ちますか

3年経ちましたね。
よく続いたなと、多分近所の方が一番思っているでしょうね(笑)

 

ー 3年続けてきて、心境の変化はありますか

途中から美味しいと言われることが多くなってきたんですね。
そこでなぜ美味しいと思ってもらえるのかを考えた時に、調味料を手作りしたり、良いものを選んでいることが理由の一つだと分かりました。
最初は調味料の良し悪しも分からなくて、オーガニックとなっているものをただ購入していたのですが、だんだんそこが判別できる様になってきて。
木でいえば調味料は枝みたいな部分なので、そこが美味しければあとはだいたい花咲くものなんです。
そういうこともあって「それなら調味料の料理教室をしよう」という方向性も見えてきました。

 

ー やまこさんはイベントも精力的に主催されていますよね

私が同じものを作り続けられないんですよね(笑)
そもそもが料理人でも職人でもないので、イベントなどやれることをやってきたという感じです。

 

ー イベントをされるとなると知識や経験が重要になってきますが、常日頃から勉強したりなどされているのですか

勉強というか……やっぱり食べ物のことしか考えていないので(笑)
365日、起きている時にはずっと食べ物のことを考えているので、改めて本を開いて勉強するというより、自然と学んでいる感覚ですね。

 

ー 調味料を自分で作ろうと思われたのはなぜでしょうか

夫の友人に調味料を自作している人がいて、それに便乗してつくりはじめました。
醤油をつくった時は、麹を3日間ほど約38度でずっと管理しないといけなかったので、お店にこたつを用意して3人で泊まりがけでつくりましたね(笑)

 

ー 醤油を作るのも大変なんですね

でも今は加工機があることに気づいてそれで作っています。
寝ずの番は向いていないので、もうそんなことはしないぞ、と(笑)

 

ー 料理を提供する際に気にかけていることはありますか

提供するものが精進料理みたいなものだけだと、それが仮にとても美味しく作れたとしても、普段揚げ物とかジャンクなものを食べている方にとっては物足りなく感じてしまうんですよね。

私にも経験があって……仕事をしながら料理教室に通っていた時、5日間みっちり働いたぶん、お休みの日は体が解放されたくて仕方ないのに、またその料理教室で健康的なものを作って食べるんです。
そうすると、せっかく体に良いくず粉とかを食べたのに、その帰りにチョコレートとか食べてしまうんですよね。それも体に良い材料とかではない、普通の(笑)
料理教室ではみんな「肉なんて食べるなんて」みたいなこと話しているのですが、私は「あぁ昨日鶏肉食べてしまった」「ラーメン食べてしまった」なんて考えて自分を責めたりしていました。

でも今は、それで良いと思うんです。

お客様も一緒で、例えば何かすごく頑張ってきて、ちょっと自分の体を癒やそうと思って食べにきた方の料理に、私は少しジャンク要素を入れるようにしていて。
体に悪いということではないけれど……例えば高野豆腐だったらよく煮てあげて、それをじっくり味わえる滋味深い調理方法がこういうお店には求められるのかもしれませんが、私は帰りにポテトチップスとか食べて欲しくないので、にんにくなどを使って唐揚げのような味付けにしてココナッツオイルで揚げてしまいます。
でもそれが美味しいと言っていただけるので、それで良いのだと思っているんです。

無理しなくていいかなと。

 

ー いきなり全てを変えるわけではなくて、できる範囲からという考えだと無理なく進められそうです

そうですね。
自分もそうですが、お客様も一緒に育っていくというか。
最初、お店にどれだけ調味料を置いても売れなかったのですが、だんだんと調味料も売れる様になってきました。
きっとお客様の目線も変わってきたのだと思います。

 

ー 「どすこい喫茶」とは変わった名前ですが、店名の由来を教えていただけますか

「どすこい」は、私が相撲力士の千代の富士さんが好きだったことに由来しています。
「やまこ」の方は私が結婚して「やまだみきこ」になったので、そこから取りました。
調べてみたら、やまこには山に住む妖怪とか、山際で山仕事をする人、という意味があって、ここにも山があるので丁度良いなと思って。

 

ー これからの展望で考えていることはありますか

私は食べることも好きなのですが、食べないこと……断食も好きなんです。
食べないことで体の酵素などが消化ではなくて修復に使われて、それがすごく気持ち良いので、断食教室なども継続していきたいですね。

 

ー 断食教室では何をされるんですか

断食の方法をお伝えしたりします。
例えば週末お休みの方は、夜だけ食べないでいてみるとか。
もうちょっと断食をしてみたかったら、朝も食べないとか。
でもいきなりすると低血糖になって眩暈を起こす方もいらっしゃるので、それなら生姜と黒糖と紅茶を朝飲んで、それから出かけましょうとか。
断食をすると、食べること以外に意識が向くので、同じ時間を過ごしていても気づきがたくさんありますよ。

 

ー 貴重なお話、ありがとうございました

 

<<編集後記>>

山田さんのお人柄がそのまま表れているような、ゆったりと心が穏やかになる店内でお話をお伺いしました。
お料理だけではなく、お店そのものがオーガニックなのだと感じる、貴重な時間を過ごさせていただきました。

 

【店舗情報】

「どすこい喫茶やまこ」
〒369-1236 埼玉県大里郡寄居町大字金尾443-6 veppu117@gmail.com

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